<いろんな教育のカタチ> ニュージーランドの教育③
今週は、ニュージーランドの大都市オークランドから、寮を有する公私立の男子校のスタッフが弊社オフィスに来訪されました。【Sacred Heart College, Auckland】この時期は大使館や民間団体が主催するセミナーやフェアが多く開催されており、世界中から学校関係者が集まって直接情報交換できる貴重な機会です。限られた日本滞在期間中にわざわざ弊社を訪ねてくださる学校の多くとは、長年の信頼関係が築かれていることを感じます。留学生サポートを担当するスタッフの方々からは、海外教育研究所を通じて留学する子どもたちは、出発前からホームシックや留学生活の困難に対する心構えがしっかりできていることが多いとのお言葉をいただくことがあり、大変ありがたく思っています。
留学は人生の一部に過ぎませんが、その一部がどれだけ意義深いものになるかは準備によって大きく変わります。弊社では、出発前のワークショップやオリエンテーションを通じて、異文化での生活を充実させるための心構えや対処法を伝える「事前準備プログラム」を大切にしています。近年、留学を志す子どもたちの平均年齢が下がりつつあり、ニュージーランドでは小学5年生から単身留学が受け入れられています。しかし、成長期や思春期にある低年齢の留学生を受け入れるホストファミリーは限られており、覚悟を持ってホストファミリーを引き受けてくださる方々は、留学生を自身の家族の一員として迎え入れてくださる様子が伺えます。その中で、ほぼ毎回のように課題として浮かび上がるのが「電子機器の使用」です。弊社の事前準備プログラムでも、スマートフォンの利用可能時間やアプリの制限を設定し、親子間でルールを話し合い、制限ツールを活用することで健全な留学生活を過ごせるよう準備していただくようお話ししています。しかし、ニュージーランドでは日本よりも、一定の年齢以下の単身での行動範囲が狭く、徒歩圏内に遊びや買い物を楽しめる施設が少ないため、自然の中で遊ぶことに慣れていない子どもたちは、電子機器でのゲームなどに長時間没頭してしまい、ホストファミリーとの交流が薄れてしまうといった事態になってしまうことがあります。決して珍しくないこのような報告を受けるたびに、電子機器に依存せず健全な留学生活を送るために私たちがお伝えできること、サポートは何があるかを考えさせられます。
彼らが身を置くニュージーランドは「Educating for the Future Index(未来教育指数)」で、北欧諸国と共に常に上位にランクインしています。(ニュージーランド教育省ウェブサイト上での紹介ページはこちら)このランキングの評価対象項目は、子どもたちのクリティカルシンキング、ソフトスキル、そしてデジタルスキルといった未来に必要とされる能力で、これらの点においてのニュージーランドの教育の質の高さが証明されています。このように教育現場で電子機器が活用されているニュージーランドですが、活用と並行して電子機器と健全な関係を築くための教育も注力されています。小学校入学と同時に一人一台のデジタル機器(タブレットやパソコン)が配布され様々な教科で活用されるため、あるスタッフが「電子機器は文房具の一つだよ」と表現されていました。電子機器が学習とは真逆にあたる遊びに使われるツールという位置づけではなく、大前提として学習ツールなのだと、なるほどと納得させられた記憶があります。
上述の通り、小学校入学後すぐにデジタル機器の使用を開始するニュージーランドの子どもたちは、カリキュラムの一環で安全かつ効果的にデジタル機器を活用するための「デジタルリテラシー」を学びます。年齢に応じて段階的に学びが進められ、低学年ではオンラインでの安全な行動や個人情報の扱い、インターネットのリスクなど実際に教育用のウェブサイトやアプリを活用する傍らで学びます。高学年になるとデジタルデータの扱い方や、マインクラフトなどのゲームを通じたプログラミングの基礎原理を楽しみながら学ぶ機会もあり、まさにデジタル社会で求められるクリティカルシンキングや問題解決力といったソフトスキルの向上も図られています。ニュージーランドの子どもたちは、こうした教育環境の中でデジタル機器と健全な関係を築く必要性、そしてその方法を意識しながら成長していきます。
もちろん、これらの学習が電子機器との付き合い方における全ての課題を解決するわけではありませんが、低学年からデジタル機器が幅広く利用され未来を見据えたスキルを養うものであり、かつ生涯にわたり欠かせないツールとしての役割を踏まえ、良好な付き合い方やリスクに関する教育も必要不可欠として提供されていることは、人生全般においても価値ある学びとなっているものと思います。