<いろんな教育のカタチ> ニュージーランドの教育②
前回取り上げた幼児教育のカリキュラムであるテファリキでは、子どもたちが自ら「選択し」、「計画し」、「挑戦する」【能動的な学習者】であることが前提とされています。教師を含めた大人に求められる役割は、決して「教える」ことではなく、子どもたちの主体的な学びを助けるために「耳を傾け」、「観察し」、「励ます」存在であると定義されています。私どもでは、日本で登校意欲を失ってしまった子どもたちのご家族からもたくさんお問い合わせをいただきます。そんな彼らがニュージーランドで笑顔を取り戻して、自信をつけていく姿は何物にも代えがたいものです。その舞台になっているニュージーランド教育のキーワードの一つがアクティブ・ラーニングです。
独自の教育システムが注目されている国ニュージーランドについて、二回目の今回はアクティブ・ラーニングを取り上げます。日本の学習指導要領に「主体的・対話的で深い学び=<アクティブ・ラーニング>」という概念が盛り込まれたのはここ数年のことですが、こちらの作成の過程ではニュージーランドの教育現場で長年実践されてきている教育スタイルが大いに参考にされてきたと聞きます。私どもでも、自治体の教育機関や教師の方から、ニュージーランドの教育現場視察を希望されるお問い合わせをいただくことがあります。
弊社からも毎年たくさんの留学生がニュージーランドの学校へ留学をしていますが、日本の教育を一定期間受けてきた皆さんがそろって口にするのは、ニュージーランドの教室では生徒それぞれに指定された机と椅子がないという点です。特に小学校では、写真にあるように複数人で囲むテーブルやソファタイプの椅子があったり、学習内容によってはフロアに座っての活動も多くあります。理解度合いによってグループ分けされたり、グループワークや議論をする機会も多くあるため、その時々で学ぶ仲間や環境、姿勢は変わります。先生が前に立ち大人数のクラスメイト全員に向けて授業をするスタイルだけではない様々な学びへのアプローチがあることで、子どもたちそれぞれの違いを存分に発揮することができたり、自分の適性を見いだせるチャンスが、日々の学習環境に数多くちりばめられているように思います。
またニュージーランドでは全国一律で使用される教科書がありません。教師がプリントを配布することもあれば、授業内でYouTubeを視聴したり、民間の学習サイトも積極的に活用されています。プロジェクト型の学習もアクティブ・ラーニングの一例ですが、社会科の授業で環境問題を学習しようとするときに、グループごとにテーマを設定し、遠足に出向いた先で体験を通して情報を収集し、その情報の理解を深めるためにインターネットでリサーチし、パワーポイントなどでまとめて最終的にクラスで発表するといった形の学び方も小学校低学年から当たり前のように取り入れられています。社会科という教科の知識習得にとどまらず、グループで意見交換することで批判的思考が養われ、自ら調べてまとめるという作業では自己管理力や自律性が培われます。このプロセスにおいて大枠の進め方は教師から指導されるものの、細かな部分において子どもたちの自由度が高いというのも特筆すべき点です。ニュージーランドの学校では一律ではない様々なアプローチで教育が展開されますので、本来子どもたちが持つ「学ぶ意欲」が自然と引き出される機会が多く、主体的に学ぶ姿勢が育まれていくものと思います。
次回の記事では、アクティブ・ラーニングを支える電子機器(パソコンやタブレット)の利用について触れたいと思います。